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2018年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ『古き森の戦記』トランペット解説

今年もこの時期がやってきました!夏の吹奏楽コンクールです。

要所を鋭く突いて効率のいい練習に繋がるよう、課題曲『古き森の戦記』のトランペットパートについて解説します!楽譜を片手に読んでください。

武功を上げろーーーーーー!!!!

おーーーーーーーーー!!

・・・って。いきなり何!?

いや、この曲だよ。『古い森の戦記』。戦国時代の熱い戦いって感じしない?

そうかな・・・。私はもう少しファンタジーよりの架空の物語を想像してるんだけど。(作曲者も「架空の戦いをイメージして作曲した」って言ってるし。

ふーん。そう。じゃあ解説行ってみよー。

(あ、流した。)

1.全体のトランペットの立ち位置や役割

まず、この曲はラーメンで例えると決して麺柔らかめではないね。

大将!ラーメンひとつ麺固めで!

・・・ってこと?

そうだね。この曲のトランペットに柔らかな音色はいらない。いや、それでもいいんだけど、『曲のもつ魅力を引き出す』という意味では聴き劣りしちゃうよね

じゃあ麺固めということで。

この曲ではトランペットは大きく分けて
①先陣をきる形で推進力を全体に与えるか
②他パートの呼びかけに対して対等な位置から呼応するか
③後ろから緊張感のあるパルス(鼓動・刻み)で全体を鼓舞するか
の3つの役割に分かれるね。

じゃあ各フレーズをどんな意味合いでどんな役割で吹くのか意識しなくちゃいけないね。


まずは全体の印象です。

1.宙を掻っ切るほどの勢いのメロディで全体を引っ張る(AやC後半,J,L)
2.曲の歯車の一つとなって調和的な動きを演出する(BやG,I)
3.一定のリズムを刻みでバンド全体を律する(C)

に分けられます。もちろん複合的な要素をもつフレーズであったり、分類しにくいものもあると思いますが、大枠こんなものでしょう。


2.練習番号A

じゃあ実際の演奏パートに入っていくよ。

おいっす。

まずAの6小節目からだけど。ここは遠慮せずはっきりとトランペットらしい音色で吹こうね。

それ、どこのフレーズでもそうじゃない?

いや。まあそうなんだけど、ここって前の4小節はホルンがメロディ吹いてるでしょ?ただ、音域と言いリズムと言い「もこもこしてて何やってるか分かりづらい」と思わせる作りになってるんだよ。ここのホルンは。

あ、そういうことか。それでここのホルンはすべての音に山形アクセントがついてるのね。

きっと作曲者もその辺りホルンに対するメッセージかと。んで、これって言うなればホルンは「深い森の中で姿は見えないけど、確かにいる」って状態なんだよね。

じゃあそれに対してトランペットは確かに姿を目視できると・・・!

そういうこと。このたった数小節のメロディでもパート間のバトンパスによってそういう情景のコントラストを見せてほしい。その意味で、トランペットはよりハッキリ、クッキリ吹くことを意識してね。

ふむふむ。吹き方は?吹き方のアドバイスはないの?

そうだねえ。ここはトランペットが独占してるから、今後の盛り上がりを想起させるという意味でも思いっきりやったらいいよ。

思いっきりだね!あとは山形アクセントの吹き分けと16分音符の縦がずれないように注意したいね!


この曲を選んだ方は12分間の最初の音がCですね。
1st,2ndはこの2小節で一気にGまで跳躍するというわけで、基本のキを試される構成になっている辺り、とてもニクイです。

「Cはこもりやすい」というのはトランペット吹きの中では常識ですので、最初の音は特にクリアに吹けるようロングトーンで磨いておきましょう。
また最後のGは開放的にBからの躍動感に繋げるようにしましょう。


3.練習番号B

2ndの人は高いGを伸ばしたと思ったら今度は1小節おいて低いGからの始まりだね。

1小節あるからよかったけど、ちゃんと柔軟なアンブシュアをつくっておかなきゃ・・・!

ま、ぼくたち以外にトロンボーンもやってるからちょっと心強いよ。

金管直管楽器の力、見せつけなきゃ!

まぁまぁ、ここはそんなに熱くなるところじゃないから。

えへへ。

Bの1小節目、3小節目を受けてのこのフレーズだから単体として吹かないようにね。

はい!浮かないように注意するにゃっ!


練習番号BはAよりも落ち着いたテンションで吹きましょう。この音楽を戦いに例えるとしたらまだまだ予断を許さない過酷な状況ですが、余力は十分に残っているという感じです。

山形アクセントで緊張感や厳格な状況を演出しつつ、音量・響きの変化でまだ余裕がある・これから展開していくことを聴衆に伝えていきましょう。


4.練習番号C

実はこのCはめちゃくちゃ重要なんだよ。

え?そうかな?同じリズムの繰り返しだしそのあとのメロディも特に難しくないよ。

まず一つはこの練習番号Cはこの曲が始まって最初の山場であるということね。

あ、確かに音量も編成もここまでで一番厚いね!

そう。ここまではまだ落ち着いて戦っていられたんだよ。でもだんだん加熱してきて混戦乱戦状態だね。

おーー!!武功を上げろーー!

でね、このCの3小節間の音型だけど奇数拍のリズムは3連符っぽくなりやすいんだ。

確かにそんなリズムしてる。

ここが甘くなると「戦い」って言っても子ども同士の喧嘩みたいなかわい~ぃ感じになってしまうから是非とも注意しようね。きゃわたん注意。

音が詰まってる方が緊張感を演出できるんだね。

そうそう。緊張っていうのは鼓動の高鳴る(早くなる)状態だからその辺りを意識すると理解しやすいと思う。

ドッッドドッド,ドッッドドッド,ドッッドドッド・・・♪

後半のメロディに関してはルカちゃんの言う通りそんなに難しいことはないね。

私たちの役割を木管にパスするからその分リードしてあげなくちゃ。


練習番号Cはとにかくリズムが甘くならないように気を付けてください。実はBの終わり4小節はサックスとホルンが3連符を刻んでいます。つられないように明確な違いを出しましょう。

後半のメロディは各音満遍なく鳴らしてください。1オクターブ以上開きのあるメロディでは低音域がないがしろにされがちです。ご注意!


5.練習番号F

D,EはオタマジャクシがいないからFだね。

1stだけ少し先に吹き始めてる。

でもここはそんなに頑張らなくていいよ。

どうして?

同じ動きをサックス、ホルンがしてるけど、どちらかと言うと木管の音色メインで進行してる場所だし、なにより楽譜上の音量指定がホルンmfに対してサックス・トランペットはmpだからね。

ほ~ぅ。じゃあ音色を添えてあげるって感じね。

そうそう。ホルンに添い寝って感じ。

真ん中にホルンで両端に
サックスとトランペットで添い寝ね

・・・ってキモいわ!!

いや・・・キモいはどうかと思うけど・・・。

変な例えださないでよ!だいたいあまり強く言わなかったけど「麺固め」ってのもおかしいんだから!

す、すいません。。。自重します。。。


1stについてはそんな感じです。。。練習番号Gの3小節前からはいったん収束するさまを見せましょう。1日目の戦いが終わり夜営に入る感じですね。

音量の変化に気を付けテンポも不自然にならないように注意してください。音程が乱れるようであれば各パート1本でもいいでしょう。

夜営・・・夜の陣営(を張ること)。


6.練習番号G

練習番号Gはここまでとは打って変わって憔悴しきった雰囲気が漂うね。

そうだね。みんな激しい戦いを終えて一気に緊張が解けたみたい。。

Gの頭4小節感はそんな様子をホルンとのアンサンブルで表現してるよ。

Hの前の方はもう次の準備って感じなのね。

うん。特にH1小節前の1拍目裏Cはトランペット1st,2ndしかないからしっかりはっきり吹きましょう。

そこは参考演奏でもこれでもかっ!ってくらい聴こえてるもんね。

それにしてもちょっと余談になるけど、このローテンポの憔悴・落胆・疲弊を表現するパートがたったの12小節で終わるって言うのはなんとも悲しいものがあるね。

そうね。これも課題曲あるあるだよね。時間の制約がなかったらもっといろんなもの盛り込めただろうにね。

昨年のスケルツァンドでも同じこと感じたよ。

なんかこう・・・改訂版!みたいなの出してほしいよね!


余談ですが、1987年課題曲の「風紋」は課題曲版(約5分半~)と原曲版(約7分~)が出ています。


7.練習番号H

なんというか、ここのトランペットは複雑だね。

複雑?ここまででもこんな感じのメロディなかったっけ?

いや、そうなんだけどね。ここっていろんな想いが(パートが)交錯するんだ。

こうさく?

うん。例えばさ、タイトルにもあるこの『戦記』の登場人物の中には絶対に戦いに勝ちたいと思ってる人もいるだろうし、勝ち負けより無事に祖国の家族に会いたいと思ってる人もいる、秘密裏に裏切りを企てている人がいてもいいし、自分の武功ばかりを気にしてる人もいるかもしれないね。

中にはこんな戦いは無意味だ!って嘆いている人がいるのもおもしろいよね。

わ~そう考えるとここのフレーズはすごく奥深いし面白いね。だから複雑なんだ。

そうそう。本当は一本槍のごとく一体であるべき、あってほしいのに全然そんなことはなくて先が読めない。でも間違いなくもうすぐ後には先の展開にたどり着いてる。

「この先どうなるの?」ってとても不安。そう思いながらもう後には戻れない、とても逼迫した状況が各パートの奏でる異なるリズムに表現されているんだ。

ひっぱくしてるって言っても、まだこの曲もう少し続くよね?

そうだよ。でもここを見せておくことで残りのJまでの流れも飽きずに聴けるんだよね。逆に言うとこの練習番号Hを上手に奏でることで飽きさせてはいけないよ。


この曲にはいろんな解釈があると思いますが、これが私の解釈です。練習番号Hはこの曲に欠かせない非常に面白いパートですね。

特に真新しいこともないので吹き方については言及していませんが、トランペットだけの動きですので、埋もれることなく音色が起(た)つように吹きましょう。

次、練習番号Iは割愛します。


8.練習番号J

ついにきました!練習番号J!

やったね!

このメロディ、ここまでに何度も出てきてるにもかかわらずトランペットが吹くのはここが初めてなんだよね。

きっと楽しみをとっておいてくれたんだね。

いや純粋か!!(笑)
まあそれはいいとして。

音量ffだよ!

ここは音域的にもトランペットには優しいし、アーティキュレーションの吹き分けという意味では基礎練習をそのまま生かせるフレーズだね。

あ、でも5小節目はmpだ。

そこはきちんと差をつけてね。K前から終点に向けて音量が拡大したり縮小したりするけど、ここをしっかり表現できるとお客さんも心を揺さぶられるし最後に向かうのがすごく楽しみになるよ。

こういうところで基礎レベルが測られるよね~。

レベルの低いバンドはこういう見せ場を平坦に演奏しがちだからね。

そ、そうそう。こういうところで差が出ちゃうんだな~。


練習番号Jはティンパニが熱いんです!盛り上がりと落ち着きのコントラストを丁寧に表現して最後の展開に備えましょう。


9.練習番号K

ついにここまできたね~。

練習番号Kの3小節目は小さな灯のようにまだ絶えてない命を表現したいね。

ここからまだまだ燃え盛るもんね!音量はpで小さいけどしっかり意思があることを伝えなきゃ。

この戦いをまだ捨ててないぞ!っていうね。それどころかこのKはLの4小節前からの全パートffに繋がる大事な盛り上がりだよ。

しかもffになる前の音量差はmpからのフォルテッシモだね!

この戦いはいったいどうなる!?というのを117,118小節目に込めてほしい。

一体どうなるの・・・!?クワバラクワバラ・・・!


Kはいよいよクライマックスです。短い曲ですが、終焉を迎える直前のパートです。

117,118小節名はバンド全体で縦も音型も完全にそろえましょう。ここがかっこよく揃うと最後のLがより引き立ちます。


10.練習番号L

Lは金管のユニゾンで始まるよ。

短い間に低音からメロディを引き継ぐ構成だね。

そうだね、あとは123小節目の3拍目から急に厚くなるからトランペットは前後の橋渡しを上手に行おう。

1st,2nd,3rdみんなユニゾン♪気持ちいいなぁ♪

こういうところで外したら目立つからね。注意だよ。

はい!

この最後のFの9拍は初心者にはきついかもしれないね。

かもって言うかきついよ。

これ、コンクールのルール的にはトランペットの誰かがこのFを吹いていさえすれば吹かなくてもOKだからね。

そうなの!?

だったら無理に吹いて音程を乱したりスタミナを削ることはしなくてもいいね。


Lはいろいろここまで楽しませてくれた割に案外すっきり終わる印象です。最後の小節はフィーリングで吹かずにテンポが変わったということを意識しましょう。


11.おわりに

この曲のトランペットは山形アクセントが多めだね。

この曲の特徴といってもいいもんね。

スタッカートとの吹き分けをしっかりして表現に豊かに吹いてね。

ムム・・・また難しいことを・・・!

ちなみにルカちゃん。この曲、戦いを描いていたとしたら最後はどうなったと思う?

うーん。。。なんか潔く終わってるし神とか天災とか全然違う要素が強引に終わらせた感じかな。

ほーん・・・そうきたか。画面の前のみんなも考えてみてね☆

んな!なにその終わらせ方!
あんたの考えも聞かせなさいよ!


『古き森の戦記』のトランペット解説でした!個人的には今年の課題曲の中でⅢ吹奏楽のための「ワルツ」の次に好きです。

演奏される方は是非とも迫力あり緊張ありの古き時代の戦いを描いてください!演奏が仕上がるのを楽しみにしています!ありがとうございました。

来年の課題曲Ⅰは「「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲」です!楽しみ!


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